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回想法  -自然に起こる心理過程-その2

回想法とは

回想法とは、昔の写真や音楽,家庭用品などを用いて、昔の思い出を想起し語り合う心理療法の一種です。1960年代始めにアメリカの精神科医、Robert N Butlerが提唱しました。

回想法の効果

認知症の方は最近の記憶は失いがちですが、昔のことを思い出し、語り合うことで、集中力の向上や自発語の増加が報告されています。また、「笑顔が見られる」「穏やかになった」など家族の意見も聞かれていることが報告されています。

回想法の方法

回想法はマンツーマンで行う個人回想法と複数のメンバーで行うグループ回想法とがあります。視覚や聴覚、触覚、嗅覚、味覚などの刺激を利用して昔のことを思い出しやすいことがわかっています。そのため、昔の写真や音楽、生活用品、季節の行事など様々なものが回想法で利用できます。

回想は自然に起こる心理過程

Robert N Butlerは、高齢者の回想を死が近づいてくることにより、「自然に起こる心理過程」であり、訪れる死のサインに伴う不安を和らげる効果もあることを指摘しています。

今年、アメリカ探偵作家クラブが授与するエドガー賞に「Hiroshima Boy」がノミネートされました。その作者の父である平原氏が死期に近づいた病床で初めて作者である娘に被爆体験を語ったとされています。その作者の父の被爆体験を参考にして「Hiroshima Boy」が書かれました。原爆投下後の広島では、被爆者から病気がうつるとか病気の子供が生まれるとか言われ、結婚相手として避けられ、被爆を隠す人は珍しくなかったそうです。被爆者である平原氏は被爆したことを容易に口に出すことができなかったのかもしれません。回想法では、当時言えなかった過去の経験を、昔を振り返ることで、今ならいえることを高齢者から語られることがあります。これはRobert N Butlerが指摘している「死が近づいてくることによる、自然に起こる心理過程」なのかもしれません。当人にとっては、言えなかった過去の体験を語ることは、人生を振り返るうえで、必要なことなのかもしれません。隠しておきたかったことは、時が経ち、死期が近づくと伝えたいことに変化することがあるのかもしれません。

過去の体験を聞き手の人生に生かす

私は30年前、平原氏とその妻と3人で一泊のラスベガス旅行に行きました。平原氏が車を運転し、ラスベガスに向かう車中で思わぬことにでくわしたのを今でもよく覚えています。片道一車線をのんびり走っていたところ、猛スピードで追い越す車のドライバーから私たちは大きな声で暴言を吐かれました。ドライバーが鬼の形相だったのをよく覚えています。平原氏は、暴言を吐かれても、何もなかったように動じることもなく、相手に言い返すこともなく笑顔で運転を続けていました。英語のわからない私にその暴言の内容を笑顔で教えてくれました。2日間だけでしたが、平原氏は常に紳士としての振る舞いでした。暴言を吐かれたぐらいで態度を変えることもなく、常に穏やかに笑顔の振る舞いでした。私は平原氏の心の広さについて不思議に思っていました。今年、平原氏の被爆体験を初めて知りました。被爆体験という、他人に知られたくない苦しい体験を背負って、平原氏は紳士であり続ける強さに変えていったのかもしれません。他人に知られたくない過去を異国のアメリカに移住し隠し、その過去を乗り越えた平原氏にとって、過去の苦しい体験も知られたくない過去も平原氏の大切な一部分であるように思えました。他人に知られたくない秘密を抱えておくことは、辛さを伴って過ごしていたのではないでしょうか。私は人に触れられたくない秘密を隠していることに伴う苦痛に耐えることで、平原氏のような痛みのわかる優しい人に近づいていくのではないかと思いました。

このように過去の体験は体験した本人だけでなく、体験談(回想)の聞き手の人生に生かすこともあります。

作業療法士K.I.

参考文献

1,野村豊子著:回想法とライフレビュー その理論と技法 中央法規 1998年

2,Naomi Hirahara著:Hiroshima Boy     Prospect Park Books 2019年

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